パイロットチェック弁ではノーマルタイプとデコンプタイプが存在します。(ノーマルタイプのパイロットチェック弁の説明はこちら)
今回はノーマルタイプとデコンプタイプで何が違うのか。デコンプタイプとはそもそも何なのか。について説明します。
デコンプタイプのパイロットチェック弁とは
結果から言うと「ノーマルタイプのパイロットチェック弁に比べ開きやすいチェック弁」です。
ノーマルタイプでは、パイロット部に圧力が発生すると油を開放してくれる構造になっていました。しかしパイロット部の圧力が低いとチェック弁を開くことができず、遮断したままとなってしまいます。
ポペットの押す力とピストンの押す力のせめぎあいになりますが、一般的には面積比が1:2が多いと思われます。
つまり「遮断されている一次側の圧力」の「半分の圧力がパイロット部に発生」しないとチェックが開いてくれないというわけです。

ノーマルタイプのパイロットチェック弁構造
デコンプタイプを使用する目的
主な目的は
- バルブ切り替え時のショックを抑える目的で使用
- 減圧弁を使用した場合の組み合わせで使用
だと自分は考えています。
バルブ切り替え時のショックを抑える
シリンダー等を電磁バルブで切り替える際、「バコーンッ」と音が発生します。01サイズのバルブではあまり感じませんが、それ以上のサイズになってくるとなかなかの音が発生します。バルブを切り替えた際、反対側に発生している圧力が一気に開放されるため発生するものです。
この音や衝撃は設備に振動となり伝わるため、ボルトを緩ませたり。マニホールドを止めている部品たちを破損させたりします。
これを抑制する時に用いるのが「デコンプタイプ」のパイロットチェック弁です。
後で説明しますが、一旦内部の圧を抜く機構があるため衝撃が緩和されます。
ちなみに他の方法だとショックレスバルブを使用すると衝撃の抑制ができます。自分の経験では衝撃吸収はショックレスバルブ>デコンプタイプチェック弁の順位で抑制できると考えています。
減圧弁を使用した場合での組合せにて
例えば下記図のような回路を組んだとしましょう。

回路中のシリンダー戻しラインに減圧弁が入っています。シリンダー出のラインはメイン圧が入ります。メイン圧を10MPaとし、減圧弁を3MPaで設定した場合。チェック弁が開かないのでデコンプタイプを選定します。
デコンプタイプはメーカーによっても違いがあると思いますが1:16(16~20)をよく見かけます。
なので理論的には減圧弁を0.6MPa程度まで落としてもOKということになります。
デコンプタイプの注意点
今までの説明で、「じゃ。全部デコンプタイプにすればいいじゃない!!!」と思ってしまいますが、もちろんデメリットも存在します。それは小さい圧力で動作できるということは、逆にノイズにも弱いということです。
先ほどの回路図の中で、横にシリンダーを増設したとします。

この場合、Yシリンダーを動作させるとXシリンダーが誤動作する可能性があります。
原因としては
Tラインが何かしらの理由で満足に流れない場合、Yシリンダーが動作するとTラインが渋滞を起こし、圧が発生してしまいXシリンダーのチェックを開いてしまう可能性があります。
図に書くと下記になります。

よってデコンプタイプを使用する場合は背圧による誤動作を考慮し
- 近くに大きなシリンダーがある
- マニホールドの出口から遠い
などの場合は注意が必要です。
逆にPラインに過剰な圧が発生する(サージ圧などで)ことでチェック開くことが出来ない。なんて事もあるので、原因不明の動作があった場合は疑ってみると何か判明するかもしれません。
デコンプタイプの構造
デコンプタイプにはノーマルタイプのパイロットチェック弁と似た形状をしていますが、内部に圧抜きのような機構が存在します。この部分の名称をデコンプレッションポペットと言います。

拡大すると

上記の図のようになっています。
ポペットの中にデコンプレッションポペットが入っています。デコンプレッションポペットの先端にはボールが入っており逆からの油が流入しないようシーリングをしています。
ピストンは段付き形状になりポペットの中まで入り込んでいます。ポペットの穴とピストン部には径に差があるため、隙間があります。
パイロット部に油が入ると、ピストンが上昇しボールを押し上げようとします。デコンプレッションポペットはポペットより径が小さいため小さい力で開くことが可能です。
ピストンがデコンプレッションポペットを押し上げると、微小の油が二次側に流れ込み、ポペットの一次側の圧力を下げます。

一次側圧力が下がれば、ピストンの力が弱くも打ち勝つことが可能になりピストンの段付き部でポペットを押し上げることができるため、チェックを開くことができます。
まとめ
デコンプレッションタイプは便利である反面、繊細なバルブです。用途に応じて選定しないと不具合を発生させる可能性もあるため、使用する場合は注意が必要です。
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