【図解あり】パイロットチェック弁が開かない原因とデコンプタイプでの解決方法

油圧

パイロットチェック弁ではノーマルタイプとデコンプタイプが存在します。(ノーマルタイプのパイロットチェック弁の説明はこちら

この記事では、パイロットチェック弁の「デコンプタイプ」について以下の内容を解説しています。

  • ノーマルタイプとの構造的な違い
  • デコンプタイプの主な使用目的
  • 導入時のメリットと注意点
  • 誤作動を防ぐための設計上の工夫

「チェック弁が開かない」「ショックが大きい」といった現場でよくある課題を、デコンプタイプがどう解決するのかを図解つきで紹介します。

デコンプタイプのパイロットチェック弁とは

デコンプタイプとは、簡単に言えば「ノーマルタイプのパイロットチェック弁よりも開きやすいチェック弁」です。

ノーマルタイプのパイロットチェック弁は、パイロット圧がある一定値以上にならないと開弁できなません。一般的には一次側圧力とパイロット側の面積比が 1:2 で設計されており「遮断されている一次側の圧力」の「半分の圧力がパイロット部に発生」しないとチェックが開いてくれないというわけです。

デコンプタイプは、この圧力差が大きくても開放できるチェック弁です。つまり「遮断されている一次側の圧力」に対し「ほんの少しの圧力」でチェックを開放できる構造になっています。

ノーマルタイプのパイロットチェック弁構造

デコンプタイプを使用する目的

主な目的は

  • バルブ切り替え時のショックを抑える目的で使用
  • 減圧弁を使用した場合の組み合わせで使用

だと自分は考えています。

バルブ切り替え時のショックを抑える

シリンダー等を電磁バルブで切り替える際、「バコーンッ」と音が発生します。01サイズのバルブではあまり感じませんが、それ以上のサイズになってくるとなかなかの音が発生します。この音の原因は、バルブを切り替えた際、反対側に発生している圧力が一気に開放されるため発生するものです。

この音や衝撃は設備に振動となり伝わるため、ボルトを緩ませたり。マニホールドを止めている部品たちを破損させたりします。

これを抑制する際に用いるのが「デコンプタイプ」のパイロットチェック弁です。

後で説明しますが、一旦内部の圧を抜く機構があるため衝撃が緩和されます。

減圧弁を使用した場合での組合せにて

例えば下記図のようなシリンダーの戻しラインに減圧弁を使用している場合、チェック弁が開かず動作しない場合があります。

回路中のシリンダー戻しラインに減圧弁が入っています。シリンダー出のラインはメイン圧が入ります。メイン圧を10MPaとし、減圧弁を3MPaで設定した場合。チェック弁が開かないのでデコンプタイプを選定します。

デコンプタイプはメーカーによっても違いがあると思いますが1:16(16~20)です。

なので理論的には減圧弁を0.6MPa程度まで落としてもOKということになります。

使用時の注意点とトラブル事例

今までの説明で、「じゃ。全部デコンプタイプにすればいいじゃない!!!」と思ってしまいますが、もちろんデメリットも存在します。それは小さい圧力で動作できるということは、逆にノイズにも弱いということです。

先ほどの回路図の中で、横にシリンダーを増設したとします。

この場合、Yシリンダーを動作させるとXシリンダーが誤動作する可能性があります。

原因としては

Tラインが何かしらの理由で満足に流れない場合、Yシリンダーが動作するとTラインが渋滞を起こし、圧が発生してしまいXシリンダーのチェックを開いてしまう可能性があります。

図に書くと下記になります。(赤色は高圧・オレンジは中圧・青色は低圧を表しています)

よってデコンプタイプを使用する場合は背圧による誤動作を考慮し

  • 近くに大きなシリンダーがある
  • マニホールドの出口から遠い

などの場合は注意が必要です。

逆にPラインに過剰な圧が発生する(サージ圧などで)ことでチェック開くことが出来ない。なんて事もあるので、原因不明の動作があった場合は疑ってみると何か判明するかもしれません。

デコンプレッションの内部構造(図解あり)

デコンプタイプにはノーマルタイプのパイロットチェック弁と似た形状をしていますが、内部に圧抜きのような機構が存在します。この部分の名称をデコンプレッションポペットと言います。

拡大すると

上記の図のようになっています。

ポペットの中にデコンプレッションポペットが入っています。デコンプレッションポペットの先端にはボールが入っており逆からの油が流入しないようシーリングをしています。

ピストンは段付き形状になりポペットの中まで入り込んでいます。ポペットの穴とピストン部には径に差があるため、隙間があります

パイロット部に油が入ると、ピストンが上昇しボールを押し上げようとします。デコンプレッションポペットはポペットより径が小さいため小さい力で開くことが可能です

ピストンがデコンプレッションポペットを押し上げると、微小の油が二次側に流れ込み、ポペットの一次側の圧力を下げます。

一次側圧力が下がれば、ピストンの力が弱くも打ち勝つことが可能になりピストンの段付き部でポペットを押し上げることができるため、チェックを開くことができます。

まとめ:デコンプタイプを正しく使うために

  • デコンプタイプは、ノーマルタイプでは対応できない「パイロット圧力の低圧チェック解放」や「ショック抑制」に効果的です。
  • ただし、誤作動や背圧トラブルのリスクもあるため、周囲の回路構成や設置位置に配慮が必要です。
  • 特に「チェック弁が開かない」「動作が不安定」などの課題がある場合には、構造を理解した上で適切に選定しましょう。

機械設備のトラブル予防に役立つバルブ知識として、ぜひ現場設計やメンテナンスの参考にしてください。

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