油圧回路図を初めて描くときに必ず出てくるのが「2ポジ」「3ポジ」「シングル」「ダブル」といった用語。
これらは油圧電磁弁の ポジション数(スプールの位置数) と コイル数 を示しています。
本記事では、初心者がつまずきやすい ポジション数の違いとコイルの役割、種類の違い を図解を交えて分かりやすく解説します。
表します。今回はそんな油圧バルブ(電磁弁)のポジションとコイルの数の種類について記載します。
ポジション数とは― スプールの「部屋の数」
油圧バルブ(電磁弁)の種類とポート数について | 技術者のたまり場
にて、スプールのお話をさせて頂きました。その中で「スプールは図面上では部屋で表します」と記載があります。ポジション数とはその部屋の数を言います。
例えば「5ポート・2ポジション弁」と「5ポート・3ポジション弁」を比較すると以下のようになります。
- 2ポジション:シリンダーは「出る」「戻る」の2動作だけ
- 3ポジション:中央に「中立位置(センター回路)」が追加され、弁を中立にできる

図1:「5ポート・2ポジション弁」と「5ポート・3ポジション弁」の比較
2ポジションを使用しシリンダーを動作する場合は「出」と「戻り」のみですが、3ポジションの場合は真ん中に部屋があります。この真ん中の部屋の種類は「センターエキゾースト」と言われ、AもBもタンクに返す。という動作になります。
3ポジションのセンター回路は複数の種類があり、用途に応じて切り替えます。(詳細は別記事で解説予定)
コイル数とは― シングルとダブルの違い
コイル数とは電磁弁に使用されているソレノイドコイルの数を言います。
例として、5ポートの2ポジションシングルと5ポートの2ポジションダブルを記載します。

図2:5ポートの2ポジションシングルと5ポートの2ポジションダブルの比較
今までの2ポジションの絵に対し、部屋の外側に何か付いたのが分かると思います。

図3:コイル拡大図
ここがコイルになります。コイルが1個だから「シングル」。コイルが2個だから「ダブル」です。しかしシングルの反対にも何やら取りついていますね。これは「スプリング」です。コイルとは違い、常時押し込もうという力が働いています。

図4:スプリング拡大図
全体の動きとしては、コイルが励磁(通電)するとスプリング側にスプールを押し込み、コイルが励磁をやめるとスプリングの力でコイル側に戻します。

図5:コイル励磁の状態
- シングル(1コイル):片側にスプリングがあり、通電するとスプールが移動し、電源を切るとスプリングの力で戻る。
- ダブル(2コイル):両側にコイルがあり、通電する側によってスプールが移動。スプリングは使われません。
コイルの種類
先ほど「コイルに励磁するとスプールを押し込む」と記載しました。しかし現実には他にも種類があるため注意が必要です。ほかの種類は下記があります。
- 押し込み型
- 引き込み型
- 比例型(引き込み・押し込み)
図で表すと

図6:コイルの種類 図解
になります。覚え方は上からボールが当たった時、スプールがどっちに動くかで覚えるとわかりやすいです。比例とは外部からの信号により無段階に変更できることを指します。油圧回路内で矢印があると「可変」できる。つまり調整できますよーという意味になります。図中の比例の絵は「開き量を調整できる押し込み型の比例弁」となります。
あとがき
まとめると
- ポジション数=スプール位置の数(2ポジ・3ポジ)
- コイル数=ソレノイドの数(シングル・ダブル)
- コイル動作には 押し込み型・引き込み型・比例型 がある
コイルの形状には他にも種類があるので最初は覚えにくく、今までの図面のコピペでやってしまいがちです。しかし、しっかり意味を理解して書いていると、型式を見ずともどんなバルブなのか情報を吸い上げることができます。先人たちが考えてきた事を、しっかり守り、時には打ち破り、普段の設計に活かして行きたいと思います。
図面での記号についてはどこかでまとめて書こうと思います。よろしくお願いいたします。
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