油圧ってなに?油圧回路を設計するのには、どんな知識が必要?
油圧の基礎
そもそも油圧ってなに?
油圧とは「作動油(流体)を使用して動力を伝達・制御する仕組み」のことを言います。
回路の構成としては大きく4つから成っており。
- 動力源 モーター+ポンプを使用しモーターの回転を圧力と流速に変換します。
- 制御系 バルブ スピードコントローラー 減圧弁を使用し油を制御します。
- アクチュエーター シリンダー(直動動作) 油圧モーター(回転動作)に変換します。
- タンク 油の貯蔵、冷却を行う。
モーターで得た回転でポンプを回すことで圧力と流速を発生させ、制御系を使用することでシリンダーなどをコントロールするわけです。また油の貯蔵するタンクを設け温度などの管理を行います。
文章ではいまいちピンと来ないので、図を使って説明すると

このような回路になります。矢印の部分はホースや鋼管にて接続します。
油圧の特徴
油圧の大きな特徴は
- 動力源とアクチュエータをホース接続することで距離を離すことができる
- アクチュエータの動力密度が高い
ことだと考えます。
例えば、1000kgの推力 速度300mm/sの能力が欲しい場合、単純計算すると、動力源はサーボモーターであろうが油圧であろうが3kw必要となります。
3kwのサーボモーターは□175mmのスペースが必要なことに対し、油圧ではφ32のシリンダー(12MPa)を使用すればよく、スペースは□55mmです。
サーボモーターのスペースはメーカーにより上下しますが、油圧シリンダーほど下げることはできません。よって実際の駆動部の構造をコンパクトにできるメリットがあります。
サーボモーターとの比較
油圧のメリット
- 動力源と駆動源を離すことができる
- アクチュエータの馬力密度が高い
- 回路全体を油で満たすため防錆に優れる
- 変速が容易
- 過負荷制御が容易
- エネルギーの貯蓄が容易
- モーターに比べ安価
油圧のデメリット
- 作動油の管理が必要
- 配管作業が必要
- 配管のメンテが必要
- 油温管理が必要
- サーボモーターほどの精度はでない
サーボモーターに比べ精度が出ないものの、安価に大きな力を出すことが出来ます。またネジを調整するだけで力や速度を変更することができることもメリットと言えます。
逆に最大のデメリットは油の管理が必要なことです。これは別の章で記事にしたいと思います。
空圧との比較
油圧のメリット
- 空圧と違い流体に圧縮性がない
- 同じスペースでも推力が大きい
- 電源があれば動力源を確保できる
- 防錆に優れる
- 応答性に優れる
油圧のデメリット
- 空圧に比べると高価である
- タンクへの戻り配管が必要である
- 空圧に比べ配管の施工が困難
- ポンプが必要である
- 作動油のメンテナンスが必要である
- 温度管理が必要である
空圧の方が簡単に使用できますが、工場にエアー源が必要です。その点油圧は動力源を別途持つため、電源さえあれば動力源を確保できます。
またサイズが同等でも推力の面では圧倒的に油圧が有利です。使用する流体に圧縮性がないため、空圧回路で発生するジャンピング動作などの意図せぬ挙動も少ないのもメリットと言えるでしょう。
まとめ
油圧で問題が起きたときは、
「もっと油さんの気持ちになって考えなさい」
と現場の上司に言われました。この言葉、自分もよく後輩に使っています。油だけでなく「LMガイドさんの気持ち」「ベアリングの立場」など自分が部品になりきって考えることで「あぁ・・・こんな風に力がかかっているんだろうな」と考えることができます。
しかし、油圧は目に見えない力が内部で働いているので問題が発生した際に、なかなか原因までたどり着けないのが現実だと思います。内部の構造や特性を理解すると見えてくることも多いため、自分も0から勉強をして現在の機械設計を向上させたいと思います。
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