油圧装置の発熱の原因と冷却について

油圧

油圧装置において油の温度管理は重要です。油の温度が上昇すると作動油が劣化し、最悪の場合は機械を破損させる原因にもなります。逆に低いと粘度が高くなるため、必要な速度に達しない。なんてことになります。

そこで油圧の温度管理について学んでいきたいと思います。

そもそも作動油が発熱すると何がいけないの?

油圧装置において、油の温度は重要です。油の温度が上昇しすぎると

  • 60℃以上にて酸化劣化をする
  • アクチュエータやポンプが熱膨張をして隙間が狭くなり、焼き付きやコジリをおこす
  • 油の粘度がさがり、油膜切れ・シリンダー速度の変化が起こる

などの症状が発生します。

酸化劣化をすると油膜切れの原因となり、熱膨張による隙間の減少と合わさり焼き付きやコジリが発生します。また粘度が下がることで隙間のリーク量が増え、温度がさらに上昇する。といった悪循環を発生させます。

作動油は10℃上昇すると酸化は2倍の速度で進むといわれており、石油系作動油は80℃が限界とされています。一般的には60℃までが使用範囲と設定されていることが多いと思います。

よって作動油は熱交換装置を用いて、冷却や加熱をする必要があります。

作動油が発熱する原因は?

作動油は色々な理由で発熱しますが、主にポンプの発生させた仕事を推力や速度に置き換えず、ロスさせることで熱や振動に変換されます。

主に下記部分が発熱原因です。

  • 可変ポンプのドレイン部
  • 固定ポンプのリリーフ部
  • 減圧弁

基本はドレイン部で発生することが多いです。絞り弁などで絞ることでも発生します。

特に可変ポンプのドレイン部などは発熱の主な原因となっています。

例えば、水冷装置をTラインに設置しており、ポンプドレインはタンクにリリースしている場合。ポンプONしているだけで、油温があがっていくため「一時停止で止めていたら油温異常が出た」と相談を受けたことがあります。

このように、ドレイン部は熱交換装置を通るように設計しないと油温異常を発生させてしまいます。

冷却方法の種類について

冷却は主に流体による熱交換を使います。使用する流体の種類によって装置が変わります。難しく書きましたが、ようは水冷と空冷です。

冷却の種類

  • タンクからの放熱
  • 空冷装置
  • 水冷装置
  • オイルコンなどの冷却装置
タンクからの放熱

正直あまり期待できないです。もちろん全くの無意味ではありませんが、タンクからの放熱だけで温度管理を試みたことはありません。

ちなみにタンクと床面との間に隙間を開けるなどの工夫をして、放熱を増やす場合もあるようです。

空冷装置

ダイキン製や油研製のピストンポンプユニット(タンク・モーター・ポンプ・空冷のセット品)を購入すると空冷装置が付いている場合があります。

空冷装置は環境に影響されますので、気温の高い地域では不向きでしょう。逆に水冷装置のように冷却水を必要としないためどこでも使用できるというメリットもあります。

水冷装置

空冷よりも冷却効率は上がります。デメリットとして冷却水が必要となり、冷却水の温度に影響します。自分の経験では、客先工場に炉があり冷却水が「お湯やないか!!!」となった時がありました。

もちろん油が冷えるはずもなく油温異常を頻発させていました。また、水冷装置の破損により作動油に水分が混入するというデメリットもあります。水冷クーラー内に水を通すため中がさびる等の症状もあるようです。

冷却水の無い工場であればチラーなどにより、単独で冷却水を作り出す装置があります。

オイルコンなどの冷却装置

簡単に言うとエアコンの作動油バージョンです。一番間違いなく冷却してくれますが、一番高価です。自分の感覚ではオイルコンを付ける頻度は増えているように感じます。

自分はダイキンさんのオイルコンを使用しています。オイルコンをつけとけば間違いなし!!と言いたいですが、油圧装置からさほど距離を離すことが出来ない・・・のに大きい!!!という点があります。

オイルコンはタンクから油を吸い取り、冷却し、タンクに戻すための別モーターが付いています。このモーターのパワーにより距離が決まりますので設置には注意が必要です。

逆に発熱を利用する

今までは発熱は敵だ!!!悪だ!!!としてきましたが、逆に発熱を利用する場合があります。それは「昇温回路」として使用することです。

自分が知っている方法としては、上記の発熱の原因②の「固定ポンプのリリーフ部」を回路に組み込む方法です。固定ポンプに限らず可変ポンプで使用しても良いのですが、とりあえず必要なことはポンプの仕事をロスさせてやること。昇温回路で熱を発生させれば、寒冷地などの昇温に使用することが出来ます。

注意点として、ポンプのサーマルが飛ばない範囲で調整することですね。

まとめ

油の温度管理を行うためには工場側の環境や機材によっても選定が変わりますので、事前にお客様と相談し決定するのが良いことです。空冷で済むのが一番良いですが、大型の設備になってくると、ほとんどの場合で水冷装置が必要となってきます。

しかし、自分で水冷なのか空冷なのかを選定するのは中々難しいです。小難しい計算式がたくさん出てきます。自分の場合はメーカーさんにタイムチャートと各シリンダーサイズの情報を渡して一緒に検討して頂くことが多いです。餅は餅屋に依頼するのが間違いないですが、依頼する側としては最低限の知識は必要だと考えます。

自分もまだまだ最低限に到達できていないので、今後も勉強したいと思います!!!

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