圧力制御弁の種類について記事にしました(記事はこちら)その中で、今回はリリーフ弁について記載します。
リリーフ弁の種類
主な用途は過剰な圧力を逃がすことに使われます。リリーフ弁の中にも種類があり用途により使い分けることが必要です。種類は
- 直動型リリーフ弁
- パイロット作動型リリーフ弁
- 電磁切替式リリーフ弁
- 比例式リリーフ弁
が存在します。今回は直動型リリーフ弁とパイロット作動型リリーフ弁について説明します。
直動型リリーフ弁について

用途
- 過剰な圧を逃がす。(サージ圧などのような過剰な圧を逃がす)
- 安全弁(回路や機器の破壊を防ぐ弁のこと)
- パイロット作動型バルブのパイロット部として使用
構造

通常時、ポペットがスプリングでシート(図中緑の部品)に押さえつけられていることでINからOUTへの油の流れはありません。IN側の圧力がスプリングの力に打ち勝つと、ポペットが移動しシートとの間に隙間が出来ることでOUT側に油が流れます。ポペットが移動する圧力(設定圧力)は、調整ハンドルを回しスプリングを縮ませることで任意に変更することが出来ます。

IN側に設定圧力が発生した図
特徴
- 応答性が高い
- 圧力オーバーライド(流量が高くなると圧が大きくなる)が低い
- チャタリングが起きやすい
という特徴があります。応答性が良いという特徴により、その他各弁(減圧弁やカウンターバランス弁など)のパイロット部に使用されます。
ここで言うパイロットとは「操作」を意味します。
例えば減圧弁であれば(〇〇MPaになったら減圧する)という役割ですが、この〇〇MPaになったらの条件を拾う部分に直動型リリーフ弁を使用し、主弁の減圧弁部をパイロット(操作)してあげる。という構造になっています。よってパイロット部の応答性が悪いと主弁の反応も遅くなるため応答性が良い直動型リリーフ弁が使用されます。
逆に応答性が良いことでチャタリングが発生するというデメリットも存在します。チャタリングとは高速でON・OFFを繰り返す現象です。
次に、圧力オーバーライドについて説明します。
圧力オーバーライドは圧力ー流量特性ともいいます。クラッキング圧を設定したものの、流量を上げると圧力が上がってしまう現象です。例えば回路を7MPa以下にしたいため、10L/minで7MPaでリリーフするように設定していたが、流量をあげたら8MPaまで上昇してしまった・・・という状態です。
これは流量により圧力が変化しますので、一般的にグラフで表されています。これを圧力オーバーライド曲線と呼びます。
パイロット作動型リリーフ弁
自分はこの辺りを勉強している時かなり混乱しました。
パイロット作動型リリーフ弁・・・・パイロットとはリリーフ弁の事と勉強したが、つまりリリーフ弁作動型リリーフ弁?と思い。 ん?ってなったのを記憶しています。
自分の解釈では、小さいリリーフ弁を使用し、大きいリリーフ弁を動作させることだ!!!と思っています。(間違っていたら申し訳ありません・・・・)
用途
- 過剰な油を逃がす(リリーフ回路に使用する)
- アンロード回路に使用する(ポンプの流量をタンクにかえす)
構造

パイロット部には前述の直動型リリーフ弁を使用します。パイロット部とは操作を意味します。今回のリリーフ弁で言えばパイロット部にて設定した圧力以上になった際に主弁が動作することになります。
一次側とは油が入ってくる場所。タンクとはタンクに接続しているポート。またベントポートは外部操作用なので基本はポートを塞いで使用します。外部操作については後述します。
一次側の圧力が低い状態図

一次側の圧力は「チョーク」を通過しパイロット部のポペット部を押しますが、スプリングの圧力に勝てず動作しません。主弁の裏と表には同一の圧力がかかり力は均衡するため、メインスプリングの力で主弁はシート(図中緑部品)に押し付けられ、タンク側への油の流入は「0」になります。
ポペットがクローズしているが一次側の圧力が上昇してきた図

次第に圧力が強くなりポペットを押す力が強くなります。
設定圧力が上昇してきてポペットが開いた瞬間の図

設定圧力より強くなるとポペットが移動をします。主弁の上部はポペットから油が流出するため圧力が下がります。主弁下部(一次側)からチョークを通じて油が主弁上部に流入しますが、穴が細いため主弁の上部と下部で圧力差が発生します
主弁が開いた状態の図

圧力差がメインスプリングの力を超えることで主弁全体が動作し、一次側からタンク側へのポートが開通します。解放後はポペットの設定圧力を守るように開閉量が変化します。
特徴
- 圧力オーバーライド特性が良い
- ベントポートを制御することで、外部からの操作が可能。
イメージは「設定圧以上になったら、余分な油を往(い)なす」
パイロット作動型リリーフ弁の用途は主に、「固定ポンプ」用の圧力制御に使用されます。固定ポンプとはポンプが回転している限り油を吐出するポンプです。
油圧回路ではシリンダーが動作している時は油を必要としますが、シリンダーが動作終わった後は回路側が「油はもういらない!!!」という状態になります。しかし固定ポンプさんはシリンダーが動作端なのか知る由もなくどんどん油を送り出してしまうため、そのままではどこかで破裂し噴水状態になります。
そこで使用されるのがパイロット作動型リリーフ弁です。回路側が欲しい圧にて設定しておき、設定以上の油が来たら全部タンクに返してしまいます。
一般的な機械の油圧は可変ポンプが多いので、リリーフ弁は不要です。が固定ポンプを使用する場合は注意が必要です。(固定ポンプと可変ポンプの違いはこちら)
またベントポートを外部で制御することで、外部から設定圧力を制御することができます。今回の図解ではベントポートを塞いでいますが、ベントポートから外部に違うリリーフ弁を設けることで違う圧力に設定することができます。またベントポートの先に電磁弁を接続し、さらにそれぞれの先に二つのリリーフ弁に接続することで、2段階圧力を任意のタイミングでリリーフすることが可能です。
まとめ
油圧バルブにおいて構造を知っておくのは、問題発生時に早期原因判明に対しとても重要です。例えばリリーフ弁の場合、タンクポートに何かしらの圧力が立っていたらどうでしょうか。パイロット部のポペットに圧が立ち正常に動作しないように思えます。
使用していると様々な問題が発生するのが油圧です。自分は設備メーカーの設計部門なので新品の状態を見ることが多いですが、それでも問題は発生します。
設計が悪いのか、初期不良なのか判断するのに構造が頭に入っているかは重要なので、自分もさらに詳しく理解できるように精進したいと思います。
その他のリリーフ弁について、電磁切替式のリリーフ弁と比例式のリリーフ弁が存在します。今回は長くなってしまったので、また別の記事にまとめます。簡単に説明すると。比例弁リリーフ弁はアナログ制御を行い画面から操作可能なリリーフ弁です。機械の品番により圧力を変更したい場合などに有効だと思います。
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