熱して冷ます熱処理のはなし

熱処理

「熱処理」って本当に種類があって、設計者を困惑させる要因の一つですよね・・・

それぞれの熱処理に特性があって、材料によっては処理できない場合もあります。

実際の選定は加工業者の方と用途や形状を伝え、話し合って決めることが良いと思いますが、設計者として内容まで理解した方がより良いモノづくりが出来ると私は思います。

今回は熱処理について自分が学んだことを紹介します。かなり長くなるのでいくつかに分けていきますので、ご興味あれば読んで頂けると幸いです。

熱処理とは

設計業務に関係せず普通に生活していても、熱処理については耳にしたことがあると思います。

日本人に馴染みが深いのは、刀鍛冶職人が真っ赤な鉄をカンカン叩いて形状を整えた後に、液体に「ぶしゅーーーー」と突っ込むシーンがイメージ出来るのではないでしょうか?

あれこそ熱処理です。

普通の鉄では弱くて戦えない・・・もっと硬く、しかし折れない鉄に出来ないのか?という人類の底すら見えない欲望を実現させたのが「熱処理」です。

またその「熱処理」をより精度よく処理できるように改良された材料が「合金」です。

熱処理の歴史

現在では多種多様な「熱処理」があり効果も様々です。

もちろん熱処理が発見された当初から全部生まれた訳ではなく、長い年月をかけて一歩ずつ前進してきました。その歴史はなんと3500年。

その先人たちの血のにじむ努力の末に我々の現在があります。

熱処理の方法

熱処理の代表的なものが「焼入れ」です。

細かい定義が決められていますが、簡単に説明すると「赤くなるまで熱し、黒くなるまで急冷させる」ことで焼き入れが出来ます。

焼入れ以外だと

  • 赤くなるまで熱して、ゆっくり冷やす。
  • 赤くなるまで熱して、常温に放置。
  • 焼入れした後に、再度温める。

等の種類があります。それぞれの方法に名前があり、得られる特性が変わるので用途に応じて方法を変える必要があります。

熱処理ができる材料

熱処理を行うことが出来る「鉄」は「鋼」と呼ばれているものになります。

そもそも「鉄」と「鋼」の違いは何でしょうか?

言わずと知れたFe。地球の成分の約4割といわれています。我々の生活の中で純鉄を見かけることはほとんどありません。基本的には何かと固有していたり、化合物になっていたりと何かと混ざった状態です。

「鉄」に「炭素」を含ませた物。我々が一般に「鉄」と言っているものは、実は「鋼」です。熱処理が可能な「鋼」は、「鋼」の中でも炭素含有量が多いものです。(方法によっては低炭素鋼にも熱処理は可能です)

鋼の種類

純鉄は、そのものとしてはほぼ世に出回らず、鋼を作る材料として使わることが多いです。では鋼には種類があるのか?実はたくさんあるんです。

鋼の種類を表にして記載しますので、下部表を確認ください。

材料記号にそれぞれ色を付けて分類をしています。

  • 「無色」引っ張り強度のみ指定された圧延鋼
  • 「黄色」鋼5大元素を指定した炭素鋼
  • 「青色」合金元素を添加した合金鋼

機械設計で材料を選定する際は、「圧延鋼」から選定を始めます。「圧延鋼」で強度が入らなければ「炭素鋼」、それでも入らなければ「合金鋼」と順に高価な鋼に検討を進めていきます。

それぞれの紹介を別記事に記載しています。

大区分中区分小区分材料例材料例記号記号
鋼鋼普通鋼圧延鋼材一般構造用圧延鋼材一般構造用圧延鋼材SS
溶接構造用圧延鋼材溶接構造用圧延鋼材SM
ボイラ及び圧力容器用炭素鋼ボイラ及び圧力容器用炭素鋼SB
SBのモリブテン鋼板SBのモリブテン鋼板SB-M
特殊鋼機械構造用鋼材機械構造用炭素鋼機械構造用炭素鋼SC
クロム鋼クロム鋼SCr
クロムモリブテン鋼クロムモリブテン鋼SCM
ニッケルクロム鋼ニッケルクロム鋼SNC
ニッケルクロムモリブテン鋼ニッケルクロムモリブテン鋼SNCM
工具鋼工具鋼炭素工具鋼炭素工具鋼SK
高速度工具鋼高速度工具鋼SKH
合金工具鋼合金工具鋼SKS,SKD,SKT
特殊用途鋼オーステナイト系ステンレスオーステナイト系ステンレスSUS
フェライト系ステンレスフェライト系ステンレスSUS
マルテンサイト系ステンレスマルテンサイト系ステンレスSUS
高炭素クロム軸受鋼SUJ
硫黄及び硫黄複合快削材SUM
バネ鋼SUP
鋳鍛鋼鋳鋼炭素鋼鋳鋼SC
溶接構造用鋳鋼SCW
ステンレス鋳鋼SCS
鍛鋼炭素鋼鍛鋼SF
クロムモリブテン鍛鋼SFCM
ニッケルクロムモリブテン鍛鋼SFNCM

熱処理の種類

熱処理には多くの種類があります。大区分として下記種類があり、さらに大区分の名称が分かれています。

本記事では大区分の名称とその特性を一言で紹介します。

  • 焼なまし(鋼を軟化させて加工をしやすくする、組織の均一化をする)
  • 焼ならし(金属組織の均一化と微細化を行い、機械的性質を向上させる)
  • 焼入れ(材料に硬さを持たせる)
  • 焼戻し(焼入れにより硬くなりすぎた金属に靭性を持たせる)

熱処理の種類の詳細は別記事にて紹介します。

まとめ

今回の記事では「熱処理」の本当の基礎と「鋼の種類」を紹介しました。各内容の詳細は別記事にて紹介させていただきます。ご興味あれば見て頂けると幸いです。

熱処理の種類と特性について

鋼の組織の種類について~フェライト・オーステナイト~

コメント

タイトルとURLをコピーしました