S-C材(機械構造用炭素鋼)とは S-C材を選定するのはどんな時?

材料

機械設計を始めてすぐ覚える材料はSS400 「機械構造用圧延鋼」ですが、機械設計をして始めて覚える焼き入れができる炭素鋼材S-C材ではないでしょうか?

今回は、そんなS-C材の

  • 「どんな時にS-C材を使うの?」
  • 「どういった注意点があるの?」

を解説したいと思います。

S-C材を使用する場面と注意点

S-C材を使用するときはどんな時?

  • SS400では引っ張り強度が不足するとき
  • SS400では表面硬度が不足するとき

S-C材を使用する上での注意点

  • S-C材に真空焼入れはメリットがない
  • S-C材の溶接は困難
  • 靭性が必要な場合は注意が必要

以上だと自分は考えています。しかし材料と焼き入れは本当に奥が深く、「これしかない!!」とはとてもいい切れるものではありません。あくまで個人の意見ということで・・・

以下に詳細の説明をさせていただきます。興味のある部分はご確認ください。

S-C材とは

S-C材は分類として「機械構造用炭素鋼」になります。名称の通り「炭素」を含有し、なおかつ含有量に規定がある材料となります。

なぜ炭素の含有量が規定されるの?と思うかもですが、詳細については別記事で記載します。簡単に言うと「炭素の含有量が鋼の性質の大部分を決定し、焼き入れに必須」だからです。

S-C材の特性としては

  • SC35以上の中炭素鋼は焼き入れが可能である
  • 鉄鋼材の5元素に規定があり、材料の成分が安定いている
  • 炭素が含有しているので引っ張り強さが強い

となりますが、やはり「焼き入れができる」こと、これに尽きます。必要な硬さ強度を熱処理によって引っ張り出すことできることが最大の特徴です。

5元素については、規定がありますが機械設計者に必要なのは炭素含有量のみでしょう。また炭素含有量も次の項目で説明します通り、名前さえ知っていれば大体の含有量が理解できます。

S-C材名称について

S-C材は「S〇〇C」と図中には記載します。

  • S=Steel
  • 〇〇=数字 炭素含有量
  • C=Caebon 炭素

〇〇の中は数字です。一番代表的な材料 S45Cの場合ですと炭素含有量は0.45%となります。

S-C材はS10C~S58Cまでが規格で決まっていますが、中炭素鋼以下の炭素含有量の場合はSS400を使用されることが多いと思います。

S-C材の中でも一般的な材料

丸物はS45C・板物角物はS50Cが流通しています。自分は丸物も板物もS45Cで図面を書いています。

S45Cは中炭素鋼に分類され、高周波焼き入れやズブ焼き入れなどで焼き入れをすることが出来ます。

しかし、真空焼き入れでは硬度がHRC30程度までしか上がらないそうです。これはS45Cの焼き入れ性が影響しています。

S-C材の溶接性について

S-C材の溶接は可能ではありますが、一般的な産業用設備では使わないと思います。

というのもS-C材は焼き入れができると記載していますが、その工程が「熱する」→「冷ます」なので溶接の工程と同じになり母材が硬くなり割れが発生してしまうからです。

焼き入れの詳細な記事は別途記載しますので、そちらを参考にしてください。

S-C材を溶接したい場合は母材を熱し、溶接後に溶接部と同じように徐々に冷やすことで割れ防止をすることが出来ます。普通な溶接に比べ難易度が増すため、通常の選択からは外すことが多いです。

S-C材を選定するのはどんな時?

設計時に最初に選定する材料はSS400です。しかし、下のような理由で高価な炭素鋼や合金鋼、ステンレスやアルミや銅などに変更していきます。

  • SS400では引っ張り強度が不足したとき
  • SS400では硬度が不足したとき
  • 耐環境性が必要なとき
  • SS400では重いため軽くしたいとき

強度不足や硬度が不足している場合は、まず炭素鋼で検討して、それでも強度が不足する場合は合金鋼を検討します。

SS400の引っ張り強度は400N/㎟~ですが、S45Cであれば500N/㎟~になります。焼き入れをすることで更に上げることが可能です。

じゃ全部S45Cにしてしまえば?と思われるかもしれませんが、なかなかそうはできません。S45Cは材料自体がSS400より高価であり、切削性も劣ってしまい加工費が上がるためです。

そうなると次の候補となるのが、合金鋼です。合金鋼で有名な物はSCM材やSKD材などだと思います。合金鋼についてはまた別記事で紹介させていただきます。

SK材との違い

別記事で詳しく解説しますが、SK材というものがあります。SK材は炭素含有量がS-C材よりも高く硬度を上げることが出来るのが特徴ですが、硬度が高すぎるため靭性がなく長期間の疲労に不向きです。

  • S-C材 炭素含有量 0.1~0.58% (機械構造用炭素鋼)
  • S-K材 炭素含有量 0.7~1.4%  (工具鋼)

上記にあるようにSK材は工具鋼です。疲労破壊が来る前に工具として消耗することが前提のため硬さが重視されています。

機械部品として使うことはありますが、稀です。

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