
機械設計や製缶、溶接構造物の現場で頻繁に見かける「黒皮材」。
材料表面が黒っぽく見えるこの鋼材、実は製造工程で自然に形成される「黒皮(黒錆)」がその正体です。
しかし黒皮材は、表面状態の特徴ゆえに塗装剥がれや溶接トラブルなど、実務上の注意点も多く含んでいます。
本記事では、黒皮材の基礎知識から、厚み・剥離・溶接時の注意点までをわかりやすく解説します。
黒皮材 まとめ
以上が黒皮材のまとめになります。詳細の解説は以下に記載します。
黒皮とは
黒皮とは、熱間圧延加工→徐冷の工程にて自然に形成された酸化被膜のことです。
表面が黒っぽくなるため、俗に「黒皮」や「黒錆」と呼ばれています。黒錆は酸化被膜を形成するもので、ある程度の防錆製を発揮するため、悪い存在ではありません。よく目にする錆は通称「赤錆」といい、赤錆は害悪です。
黒皮の特性
- 黒皮材=黒皮が残ったままの鋼材
- 圧延直後の表面に黒皮が形成され、そのまま出荷された材料を指します。
- 平鋼・角鋼・丸棒・角パイプなど、多くの鋼材に見られます。
黒皮材の防錆
黒皮は鋼材表面と空気の接触を防ぐため、黒皮成形の後は錆が発生しにくいです。あくまでしにくいだけなので、環境によっては錆は発生します。
黒皮材の塗装上の注意点
黒皮は、母材との密着が弱いという特性があります。
このため、黒皮の上からそのまま塗装すると、黒皮ごと塗装膜が剥がれることがあります。
また、メッキ処理も密着性の観点から基本的には不向きとされています。
塗装・表面処理を行う場合は、事前に黒皮を除去することが望ましいです。
黒皮の厚み
鋼材により厚みが違うため一概には言えませんが自分の経験では
- 角パイプ 0.05mm
- t16以上の鋼材だと0.5~1.0㎜程度
と考えています。
冒頭でも記載した通り形によって厚みが違い、仕入れるメーカーによっても変わると思います。正確な値を知りたい場合は、実際の仕入れ業者に確認されるのがベストだと思います。
角パイプは平板を酸洗いしてから鋼材にしますので、黒皮が薄く仕上がっています。
黒皮の溶接時の注意点
黒皮材を溶接するときは、溶接する箇所から20mmほどは黒皮を落とすことが好ましいです。
黒皮材を溶接部に溶け込ましてしまうとブローホール(気泡)が発生し強度が落ちます。特にTig溶接する際には注意が必要です。
溶接時の問題点
- 黒皮が溶融金属に巻き込まれブローホール(気泡)を発生させる
- 接合部の強度低下につながる
- 特にTig溶接では外観や品質に大きな影響
推奨対処法:
- 溶接する範囲から20mm程度黒皮を除去してから溶接を行う
- 除去方法はディスクグラインダー・サンドブラスト・酸洗いなどが一般的
黒皮の豆知識
製鉄メーカーやサイズによって表面が黒色や青色、赤色の鋼材があります。この違いは各メーカの圧延温度や冷却速度の違いによって発生します。
一般的に圧延加工は800℃~1200℃になりますが、この圧延温度が900℃以下の場合に鋼材表面のミルスケールが赤色になることがあります。冷却中に酸化が進み赤色のミルスケールが生成される為です。黒色のミルスケールは高温で圧延され、冷却も高い温度からゆっくり冷やされる為ミルスケールは黒色となります。
分かりやすかった黒皮の説
人工的に黒皮を発生させたり、比較したり、黒皮を食べたり・・・・
鉄が好きなんでしょうね。とても勉強になりました。
引用 YOU TUBE
まとめ|黒皮材を使いこなすために
- 黒皮材とは、熱間圧延で形成された黒錆(酸化被膜)を残した鋼材
- 表面の黒皮は軽い防錆性を持つが、塗装・溶接前には除去が必要
- 黒皮の厚みは形状によって異なり、一般に0.05〜1.0mm程度
- 溶接時には20mm程度の除去処理を推奨
- 表面色の違いは圧延条件や冷却速度によるもので異常ではない
黒皮材は、コストパフォーマンスが高く、構造材として多く使われます。
それ故に、特性を正しく理解しておくことで、加工ミスやトラブルを未然に防ぐことができます。
扱い方をマスターし、現場や設計にしっかり活かしていきましょう。
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